どんどん進化するアニメの世界! 3DCG未来の可能性

2015.8.30

CATEGORIES:国内 ,学校・教育

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平面的なイメージが強いアニメの世界ですが、いまやさまざまな作品に3DCGの技術が使用されています。簡単に解説しますと、3DCG とは、2DCGに「奥行き」を足し、3次元の描写を平面場投影したCGのこと。アニメやゲームをはじめ、CADなどの多様な分野に使用されています。

動きの描写に関して、演算で自動処理がされるため、2Dアニメのように1コマずつ描く必要がありません。画面上でつくった立体を、画面上のカメラで撮影する……というイメージがわかりやすいかもしれませんね。空中を縦横無尽に戦闘機が駆けるようなアクションやロボットの飛行など、カメラワークが頻繁に移動するアクロバティックなシーンが劇場アニメだけではなく、30分のテレビアニメでも見られるようになったのは、3DCGの技術進歩があってのことなのです。

さて先日、本校で3DCG業界を牽引する方々に来校いただき、3DCGの持つ特徴やその魅力、アニメへともたらす影響、今後の展望などについて語ってもらいました。その名も「3DCGでアニメを変えた男たちのロマン、その愛」。登壇いただいたのは、アニメに新しい風を吹き込んだ以下の方々です。

有限会社神風動画の水崎純平氏、株式会社グラフィニカの吉岡宏起氏、株式会社サンジゲンの松浦裕暁氏、株式会社ポリゴン・ピクチュアズの塩田周三氏。

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各社の例を挙げると、神風動画はアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのオープニングや、国内外で話題になった理化学研究所のPRアニメ「播磨サクラ」などの制作。グラフィニカは「劇場版PSYCHO-PASS サイコパス」や「楽園追放 -Expelled from Paradise-」、サンジゲンは「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」「キルラキル」の制作を。ポリゴン・ピクチュアズは「シドニアの騎士」や「山賊のむすめローニャ」などを手がけられています。まさに3DCG業界の四天王ともいえる企業の代表者たちです。

というのも、今回の業界セミナーはCG-ARTS協会に企画協力をいただいた特別企画。CG-ARTS協会は、正式名称を「公益財団法人 画像情報教育振興協会」といいます。コンピュータグラフィックス関連のクリエイターとエンジニアの育成、文化振興を目的とする公益法人で、CGクリエイターや画像処理エンジニアなどの検定を開催しています。登壇された企業は全て、CG-ARTS教会とパートナーシップを結んでおり、これほどのメンバーが一同に会する機会はそうそうありません。すばらしい講座を神戸電子の業界セミナーとして開催できたことを光栄に思います。CG-ARTS協会と登壇者のみなさまには厚く御礼申し上げます。

さて、当日は学生・教員のみならず一般の方々にも多数参加いただき、会場となった北野館ソニックホールは満員御礼。いかにアニメカルチャーのなかに3DCGが浸透し、そのアイデアや技術に対する期待値が高いかが感じられました。

どういった人材が業界において求められるかというと話題に関して、登壇者のみなさんが口をそろえて仰っていたのが、「臨機応変な人間が欲しい」ということ。技術の発展によって、モノのつくり方はどんどん変化します。「変化を嫌がらず、新しい技術やツールをどんどん使えて、変化すること自体を楽しめる人間であることが、よりフレキシブルに、より創造的なアウトプットをもたらす」と松浦氏がお話されると、吉岡氏も「僕もそれが言いたかった」と。

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また、何をもって「腕」とするかはわからないが、まずは「人間力」が必要だとも。自ら発信をする、わからないものは人に聞いてアクションを起こすことが重要と塩田氏がお話しされていました。例として水崎氏が挙げていたのが、「生意気で喧嘩になりがちな奴はじつは好き。味わいが出てくるので。ぶつからないように合わせてくるよりは、ぶつかってくれる方がいい」というお話でした。衝突があった方が、仕事の上でよいパートナーになるのだそうです。意外に感じるかもしれませんが、業界内ではイエスマンであればあるほど、離職率が高いのだそうです。よい作り手になる人間は、できないならできないとハッキリと言う、さらに「○○はできないけれど、○○ならできる」と代案をきちんと出せる人間だということ。仕事である以上、オーダーはクリアしなければいけませんが、自分の意志を持ち、しっかりと意見できる人材が欲しいと、松浦氏が締めくくってくださいました。会話のなかで出てきた「技術は価値を生み出すものでしかない」という言葉は、私も覚えておきたく思います。専門ツールとしてのソフトを使えたり、作業が速かったりといった、実務的な事柄に関しては二の次。まずは変化を恐れずに行動すること、そして他者とのコミュニケーション能力をどんどんつちかってほしいとの思い、我々学校関係者と強く共有できるものです。

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講義後、登壇者のみなさまには、本校の3DCGアニメーション学科の作品公表会にご参加いただきました。第一線で活躍する4人のプロからアドバイスを貰うことができる……。学生にはまたとない機会です。2年生の学生たちが、それぞれ制作した作品をプロジェクターに投影し、プレゼンテーションを行いました。アニメ的なモーションが得意な学生、ゲーム的なモーションが得意な学生、フィギュアの原型となるモデリングが得意な学生……。それぞれの「好き」が形になった作品の数々、そのひとつ一つを丁寧に評価してくださいました。時には厳しい意見も発せられましたが、学生たちにとっては将来、業界の第一線でアウトプットしていくためのよい経験となったのではないでしょうか。作品を発表したのは2年生でしたが、公表会には1年生も参加。先輩方の作品や、それについて交わされる4人の意見を真剣な面持ちで聞いていました。

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デジタル技術はめまぐるしいスピードで発展します。まだ完全にぬぐい去れない3DCG特有のモーションの違和感も、ソフトウェアや制作ノウハウの向上によって完全になくなっていくことでしょう。未来のアニメのつくり方を創造するのはみなさんです。どんな問題が発生しても、いかようにも変化できる、柔軟なクリエイターであってください。

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未来のネットワークをつくる 神戸電子の「プログラミング女子」 後編

2015.8.12

CATEGORIES:国内 ,学校・教育

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前回に引き続き、神戸電子の「プログラミング女子」、小湯原沙紀さんとの対談の様子をお届けします。後編では、小湯原さんが昨年度末にIT分野の優秀作品発表会「Digital Works」で制作した、テキスト共有システムについて、また就職などについて話した内容を紹介します。

――:演習で「Raspberry Pi」を使用した、テキスト共有システムを制作したと聞いています。どんなものか簡単に説明してもらえますか?

小湯原沙紀さん(以下、小湯原):「Raspberry Pi」は、手のひらサイズのコンピューターで、ディスプレイやキーボードは外付けになります。小さいのによく働いてくれる、なかなかに可愛いやつです。

――:なぜそれを選びましたか?

小湯原:安いからです(笑)。価格が安価で、手軽にサーバーとして使えるので。ちゃんとネットワークにも繋がります。演習では、「Raspberry Pi」を使って、文章をウェブ上で共有するシステムをつくりました。巷で有名なものでは「evernote」なんかが近いかもしれませんね。

――:文章共有システム、どうしてそれをつくろうと思ったのですか?

小湯原:何をつくろうか仲間内で話しているときに、文章の共有システムが欲しい、という話が出ました。テキストエディタを元にすれば便利なものになるではないかと。みんなでそう話がまとまり、制作することが決まりました。

――:なるほど。ひとりではなく、チームで制作したんですね。

児湯原:そうですね。「Digital Works」のためのチームです。女子5人、男子2人の計7人で制作しました。クラスの男女比が約10:1なので、クラスの女子がかなり集まったチームになりました(笑)。

――:まさに「プログラミング女子」が集まったチームだったんですね。制作するなかでの苦労話はありますか?

小湯原:グラフィックの話になるんですけど、JavaのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)には「Swing」と「JavaFX」、ふたつのアプリケーションがあります。今回「JavaFX」の方をはじめて使ったんですね。結構勝手が違って、製作中はみんなで格闘しました。「JavaFX」はXMLの言語を書けるようになっているんです。XMLはインターネット上でさまざまなデータを扱う場合に利点を発揮する言語なんですけど、仕様をXMLにひとつひとつ変更しないといけない部分があって。そのあたりは苦労しました。

――:話の中身が完全にプログラム女子です。(笑)製作期間はどれくらいかかりましたか?

小湯原:だいたい3〜4ヶ月でしょうか。何をつくるかは早くに決まっていたんですが、メンバー各々の国家試験のタイミングなどが重なって、着手が遅かったんです……(笑)。

――:なるほど。「Digital Works」での結果はいかがでしたか。

小湯原:えーっと……受賞はできませんでした(笑)。

――:えー! そうだった!?(笑)

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――:さて話を変えて、就職先のこともお聞きしましょう。小湯原さんの就職先について教えていただけますか。

小湯原:はい。エスアイエス・テクノサービス株式会社という会社です。就職活動をはじめたのは確か今年の2月くらいになってからで、就職がきまったのは5月の頭です。

――:実際、合格をもらってどういった気持ちでしたか。

小湯原:最初は信じられませんでしたね。それまで、ずっと面接練習をしてこなくて。2月の終わり頃にキャリアセンターの先生に相談しました。3月の間はずっと、Web系の会社にインターンをしていたんです。そこではPHPを勉強していて。なので、本格的に動きはじめたのは4月になってからという……。

――:インターン先に就職しようとは思わなかった? やっぱりネットワーク?

小湯原:やっぱりネットワークの方が楽しいかな、と。

――:なるほど。将来なにがしたいか、という話はすでにお聞きしました。ネットワークで評価されるエンジニアになりたいと。そこで、インターネットの可能性、ネットワークのひとつですけれども、なにか展望や予測はありますか? インターネットっていうのは今後こうなるんじゃないか、もしくはこうしていきたい……とか。

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小湯原:ずっと思っていることがひとつあって。インターネットは「物理的な距離が生む不利」を、どんどんなくしてくれるんじゃないかと考えています。私の地元はかなりの田舎なので、ものすごく不便で、閉ざされた環境でした。それが中学のときにパソコンを買ってもらって、インターネットに繋いだことで、世界がすごく広がった感じがしまして。

――:鳥取の北部から進学してきたんですよね。

小湯原:はい。実家は、電車や汽車の時刻を調べてからじゃないとまともに動けないぐらいの田舎なんですけど(笑)。今までは人が集約する場所に、サービスや情報の集積が限定されていました。けどインターネットの広がりで、都市から遠くに住んでいる人が受け取れきれなかった情報を、今後はもっと受け取れるようになるんではないかと考えています。……とはいえ、まだまだ集積地の情報密度は高いんですが。

――:その人から刺激を受けるというよりは、人が多いと市場が大きいので、いろんなサービスが早く来ますからね。神戸市も、人口が多いので。人が多いと、それによって生まれる出会いが多い……とかね。神戸に進学、神戸電子に来た時の印象はいかがですか?

小湯原:そうですね。「変な人が多いな」って思ってました(笑)。

――:(笑)。それはいい意味で? それとも、おや? っていう。どっちでしょう。

小湯原:いい意味で変わり者が多いなと。高校の時は、私もわりと変な人扱いされてたんですけど。神戸電子に来たら変人扱いされないので、調子に乗ってどんどん変な方向にいってる気がします(笑)。

――:特別な技能習得を志としているからでしょうか(笑)。その人たちと集まることで得られたものはありますか。

小湯原:やっぱり、わからないことを聞ける人が近くにいるっていうのは大きいと思います。私の地元ではパソコンに詳しい人が全然いなかったので、全部自分でやっていくしかなくて。それが神戸電子だと、みんなパソコンが好きで学校に来ているので、ちょっとしたことだったら周囲の人に聞けばいい。

――:問題を共有できる存在は大切ですね。さきほど、女子はクラスの1/10と仰ってましたが、プログラミングとなると、男子社会っていうイメージが世の中にあるかもしれないんだけど。そういうことは感じてないですか?

小湯原:やはり少し、女子はプログラミングが苦手な人が多いかな、って感じはしますね。ただ、できる人は女子でもすごくできるので。そのあたりはあんまり関係ないかなと思います。プログラミングはやっぱり敷居が高いんですけど、ちゃんとやればやるほど、自分で「ここもこうしたらできるんじゃないか?」と思いつきやすくなるし、時間がかかっても、どこかで絶対にひらめくことがあります。なので、難しいと思っても諦めずに……。あまり苦行だと思わないでやるのがいいと思いますね。

――:なるほど。今のいいですね。ひらめくことがある、っていい言葉ですね。敷居などは気にせず、まずは「好き」の気持ちを大切にしてほしいですね。小湯原さん、今日は長い時間のお話、どうもありがとうございました!

小湯原:ありがとうございました。

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