最新鋭の音を教育現場に ソニックホール音響機材を一新

2015.3.7

CATEGORIES:学校・教育 ,音楽

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北野館地階のソニックホールは、特別講義や学生作品の発表会、校外イベントなどに幅広く使用され、神戸電子の顔となっています。このソニックホールの音響機材が、昨年9月にリニューアルしたのをご存知でしょうか?

今回、スピーカーやアンプ、ミキサーに加え、それらをつなぐケーブル配線も含めたサウンドシステムの全てを一新。スピーカーは舞台両脇の上部から吊り下げるラインアレイタイプになりました。イタリアのアウトライン(OUTLINE)社製、最新鋭のラインアレイスピーカー’マンタス(MANTAS)’シリーズです。

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機種選定は、サウンドテクニック学科に音響技術の特別講師として、教えに来てくださっている株式会社トライオーディオさんと相談して決めました。トライオーディオは関西の会社で、日本を代表する音楽フェスティバル、フジロックフェスティバルで昨年、15ものステージの音響設営と運用を行った、まさに日本を代表する音響のプロです。そこで最も使用されているラインアレイ型スピーカー群がアウトライン社製でした。

このスピーカーの音質特性は、世界各国の音楽シーンで高い評価を得ています。しかし、細かく調整をしなければその上質感は引き出せないという特徴を持っています。加えてラインアレイ型は、高い位置から吊り下げて使用するため、正しく扱うには、吊り下げ部分の安全面を確保しながら、スピーカーを設置したり、その音の調整を行う技術が必要となります。簡単に設置できて、簡単にきれいな音を出せたのでは技術が身につきません。あえて難易度の高いものを教材として使用することで、学生諸君には高い応用性を発揮できる礎的な技術力を習得してもらうことを狙いました。その為に言わば音響界のF1マシンを導入したということです。

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「そもそもラインアレイスピーカーって何?」という方に、簡単な解説をします。

ラインアレイ型の一番の特徴は、広い会場内のあらゆる場所に対し、均一に音を届けれることです。
通常、SR(プロオーディオ/PAの中でも、音楽演奏寄りの音響)用のスピーカユニットは、中高音域を担当するキャビネットと、重低音を担当するキャビネット(サブウーファー)に分かれます。特に前者の方に大きな違いが有ります。

通常のスピーカーは点音源と言われ、一つの点から出た音が縦方向、横方向共に同じ大きさで輪のように広がって行きます。会場が広くなると、これらを縦横に並べて全体の音圧を上げるのですが、それぞれの音が縦にも横にも広がるため、互いに干渉して音の反射が起こったり、スピーカー近くでは大きなハウリングが起こったりと問題が出てきます。
これに対し、ラインアレイスピーカは線音源と言われ、縦(垂直)方向の音の広がりを抑え、横のみに広がる構造を持った比較的小さなスピーカキャビネットを縦にたくさん並べることにより、余分な音の反射を押さえながら、広範囲に純度の高い(混ざりけの少ない)音を届けることができるようになります。

地元神戸の音響機器メーカTOAのWebサイトに良い解説がありますのでそちらもご覧ください。

各スピーカーキャビネットはゆるやかなカーブを描いてステージ前面の高い位置からつり下げられます。このカーブは客席の形に合わせて設定されるため、会場の広さや座席の状態に応じた音の放出が可能です。しかも、いまはデジタル技術により、音が会場内にどれだけ届くのかを事前にシミュレーションすることも出来ます。会場の壁の素材の影響で音が濁ってしまうような場合も、それを解析して改善するソフトウェアがあります。現代の音響テクノロジーは、会場の特性を活かしたり、補ったりしながら、アーティストやエンジニアが、音の表現に対しとても細かな設定ができるまでに進歩しているんですね。

また通常、ラインアレイ化には音声信号のデジタル化が伴います。今回これをフル導入したことでカリキュラムの幅が更に広がりました。舞台でバンドが演奏をする際、ボーカル、ベースアンプ、ドラムなどにそれぞれマイクをあてていきます。ドラムだけでも10本、20本と必要です。これまでは、それら舞台上で拾った全ての音を、ステージから離れたミキサーまで個別に届けなければいけなかったので、舞台上はすぐにコードで一杯になってしまいます。今回、これら数多くの音声信号をステージ側で一旦デジタル信号化し、一本のLANケーブルでミキサー側に飛ばすシステムとしました。舞台上のコードの混乱が無くなり、演奏している人たちにそれぞれ必要な音だけを返すモニター作業もスムーズになります。また、録音や調整もすぐに行えるなど、音楽イベントのあらゆるシーンでのフレキシブルな対応力が格段に上がっています。

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日常、非日常を問わず、生活の中で得る精神的充足感を高めるという大きなテーマに関し、人の感覚器官である五感というものをいかに満足させるかとの関心も高まっています。このうち、神戸電子サウンド分野では、音や声の表現者として、聴覚を心地良くするための取り組みを続けています。今回、国内の教育機関はもとより、中小規模ホールの中でも最先端に位置する音響機材を導入したソニックホール整備もその一つ。

人生のトピックとなるような非日常的なイベントでも活躍する音響技術。これを学ぶ学生諸君には是非、ダイナミックな企画と繊細さ伴ったとことんの質感調整でもって、心地よい音空間を創出できるようになって欲しいものです。

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時代を超えて響く 四つ打ち盆踊り「テクノ盆」

2014.12.2

CATEGORIES:学校・教育 ,神戸 ,音楽

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さて、夏の思い出を振り返るシリーズ第2段は、8月25日に開催されたホテル北野プラザ六甲荘と神戸電子合同の夏祭り「テクノ盆」。毎年恒例のイベントなんですが、今年も盛り上がってくれました。神戸の夏の締めくくり、僕はこれだと思っています(笑)。もう冬になってしまいましたが、来年の告知も兼ねて「テクノ盆」の様子をお伝えします。

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まずは軽く盆踊りの歴史から。盆踊りはそもそも仏教行事のひとつ。平安時代の僧・空也上人が広めた「踊念仏」に起源をもつともいわれています。踊念仏は、鉦や太鼓を鳴らし、踊りながら念仏を唱えるというもの。念仏を覚えやすく踊る楽しみがあったため、全国的に大ヒットしたそうです。こうした踊念仏が、念仏より踊りに重点をおくことで「念仏踊り」が生まれ、さらに庶民の自治能力が高まるにつれて、次第に庶民のエンターテインメントとしての「盆踊り」が確立したそうです。
高らかな祭り囃子に、腹に響く太鼓の重低音。きらびやかな提灯の下、集団で踊ることのエクスタシー……今風にいうと、盆踊りは“和製のクラブ”といったところでしょう。音に合わせて踊り熱狂していた光景を思い浮かべると、庶民が日頃のストレスを発散する場になっていたのかもしれません。
しかし、明治維新後の脱亜入欧にともなって、盆踊りはそのエネルギーの大きさから警察の取り締まり対象になります。今も昔もお祭りにはお酒がつきものですし、娯楽が現代よりもずっと少なかった時代ですから男女の出会いの場でもあったのです。それが風紀を乱すということで目をつけられたんですね。取り締まりが強化されるにつれ、和製のビートは近代化の波とともにエンターテインメントの表舞台から姿を消し、各地方でひっそりと踊り継がれるだけになってしまったというわけです。昨今のクラブやダンスを規制する風営法問題と通じるところがあります。
けれど、今でも晩夏を締めくくる盆踊りの活気や、見よう見まねで踊る子どもたちの笑顔を見ていると、盆踊りのメンタルは日本人の心にしっかりと刻み込まれているのではないかと思います。

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「テクノ盆」はそんな伝統的な盆踊りの最後に、DJブースを設置し、クラブミュージックさながらの祭り囃子で踊るユニークなおまつりです。形骸化していった盆踊りを、電子音楽と最新の音響技術でリエンジニアリングした祭り囃子でもって、いまの若い人たちにも親しんでもらえるようアレンジしています。毎回、電子音楽に和楽器を合わせるのですが、今年は大太鼓、三味線、笛の生演奏を組み合わせました。古今の橋渡しとなるようなミックスでしたね。電子音による四つ打ちビートと、大太鼓によるヘッドビートとが、音の衝撃波となって身体にビリビリと伝わってきました。晩夏の暑さも加わって、会場はあっという間に熱量を帯び、参加した学生は当然のことながら、お越しいただいた年配の方々も自然と身体が踊り出しているようでした。もちろん僕も踊りましたよ。

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来年もさらにパワーアップして帰ってくることを約束しましょう。今年を逃した皆さん、ぜひお越しください!

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生田神社の夏祭りで感じた、音楽とお酒のパワー

2014.11.12

CATEGORIES:学校・教育 ,神戸 ,音楽

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すっかり秋の装いになりましたが、記憶の整理も含めて夏の思い出を振り返ってみます。今夏、思い出深い出来事のひとつが8月に開かれた生田神社の夏祭り「大海神社祭(たいかいじんじゃさい)」です。

神主さんより、神戸電子で「夏まつりのサウンドステージを受け持ってもらえませんか?」とお声がけいただき、サウンドテクニック学科の教員、学生とでお受けしました。生田神社さんとは、僕が代表世話人をしている「音楽のまち神戸を創る会」の事業の一つ、「市民が街中で音楽を楽しむ」活動 ‘078’ を神社内で開催させていただいてからのご縁です。078では、当初「境内」での演奏と聞いていたのですが、フタをあけてみたら舞台はなんと「本殿」。雅楽上演の前に、アンビエントな電子音楽を奉納として響かせました。

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生田神社は神戸という地名の由来として知られています。日本書紀にも記述が残る由緒ある神社で、ふだんは静かで厳かな空気に満ちています。しかし、この夏祭りに限っては、静から動へ、およそ神社の催しとは思えないような盛り上がりを見せます。境内に音楽ステージやDJブースが組まれ、ジャズ、声楽にロック、アイドルユニットによるライブやダンスなど、さまざまな催しが続きます。規制の多い日本の都市部でこれだけの音量を許容し、広く若者文化を受け入れている神社はそうそうないでしょう。さらに、日暮れからは夜店ブースが開き、神戸・灘の蔵元である剣菱酒造や神戸ワインをはじめ、地酒がずらっと並びました。

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アッパーな電子音が響く本殿前で踊るダンサーの姿、お酒を片手に境内で沸き起こるコール&レスポンス……神社であることをつい忘れてしまうような盛り上がりを見せます。しかし、古来より縁日には芸能の奉納が付きものであり、“人が集まる場をつくる”という意味において、神社はオーガナイザーのような存在だったのでしょう。そこでは、笛や鉦の音はもちろん、音頭にあわせて“舞い”があり、お酒で神様を迎えたわけです。人が集まる場所をつくるための手法はたくさんありますが、あらためて“音楽とお酒”の力、そして日本古来のお祭りの魅力を感じました。

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さて、神戸電子は今回、3日間にわたってサウンドステージを任せていただけました。ステージの設営から音響機材の調整、運営の進行まで、サウンドテクニック学科の学生が精一杯の力を発揮してくれたように思います。やるからには、毎回、音の解像度にこだわった音出しをこころがけていますが、今回もオーディエンスの皆様、一様にそこを評価するお言葉を頂きました。今回サウンドステージを任せてくださったのは、このこだわりへの信頼があってこそ。降り止まない雨や突然のトラブルにもめげず、学生たちも素晴らしい“奉納”ができたのではないでしょうか。

生田神社の方々も喜んでくださったようで、すでに来年の続投要請も。今年以上に、壮観なお祭りになるよう頑張りたいと思います。   

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