学生がJeff Mills のライブを担当! 世界的デジタルアートの祭典「TodaysArt.JP 2015」in神戸

2015.9.30

CATEGORIES:国内 ,学校・教育 ,神戸

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芸術の秋が次々と皮切られる中、サウンドテクニック学科の学生たちが、神戸で開催されたアートイベントで、メインステージ・ライブの照明オペレーションと、展示作品の音響設営を担当しました。イベントは「TodaysArt. JP 2015」。

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「TodaysArt」は、オランダのデンバークで誕生した最先端アートとライブパフォーマンスの祭典です。現在はオランダのみならず世界各国で開催され、多大な注目を集めています。
他の芸術祭との大きな違いは、先にもふれたように、デジタルインスタレーションや、プロジェクションマッピングといった先端技術を用いたデジタルアート、メディアアートが主体のイベントだということです。また、作品に手を触れ、作品から発せられる音や光を浴びて作品鑑賞ができるなど、インタラクティブな要素をもっているのも特徴です。

2014年にはパイロット版である「TodaysArt.JP : Edition Zero」が東京で開催されましたが、いよいよ今年、「TodaysArt」が満を持して日本での本開催を行ったのです。
前半は東京の天王洲アイルで、そして後半はこの神戸、新開地にある「神戸アートビレッジセンター」通称KAVCで開催されました。2013年に TodaysArt.JP プロデューサー 石崎さんの勧めで、共にオランダ、ハーグに行き、TodaysArtに触れてから2年。石崎さんの熱量に多くの方が巻き込まれ、スピーディーな展開となりました。

KAVCは震災の翌年に建てられ、古くから神戸の芸術発信地としてその役を担ってきた建物です。「TodaysArt」の旗揚げ人であるOlof van Winden(オロフ・ファン・ウィンデン)氏が、震災の2年後に神戸を訪れたこともKAVCでの開催実現のきっかけとなりました。

「TodaysArt.JP 2015」代表石崎さんもこの日会場におられました。私が代表世話人を努める「音楽のまち神戸を創る会」の中心人物でもあります。神戸での開催にあたり、少し話をうかがいました。

「神戸のようなクリエイティブの土壌があり、街にスペースがあるような場所で開催をしたかったんです。今回は東京でも開催しましたが、ただ東京の催しを神戸に持ってくるだけではなくて、各地域に根ざした形で『TodaysArt』を落とし込むようなイベントにしていきたいと考えています」と石崎さん。

今回、学生を設営メンバーとしてお誘いいただいたのも、私と石崎さんとの関係以外に、上記のような「地域に根ざす」といったコンセプトがあってのことです。一流のアートや音楽をつくりあげるお手伝いを、神戸という地域性もふまえ、神戸電子の学生ができるというのはとてもうれしい出来事でした。

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当日、学生たちはレセプションイベントである「Jeff Millsのバンド編成によるスペシャル・ライブセッション」の舞台設営を手がけました。Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)氏はルーブル美術館で、企画展のキュレーターを半年に渡り務めるなど、テクノというジャンルにとらわれずに、音楽表現を革新しつづけるアーティストのひとりです。

この日学生たちは朝早くから会場に集合し、照明の設営や音響調節を手がけました。照明とは舞台上を演出する上で大きな役割を果たします。音楽や空間に合わせた照明を組むことで、オーディエンスは聴覚だけではなく視覚からもライブを楽しめるようになります。

まずは「吊り込み」と言われる作業で、それぞれの位置に照明を吊り、コンセントを差し込みます。今回のライブは即興演奏だったため、出演者の位置が決まっていないという特殊な現場でした。学生を含むスタッフの皆さんは、どの位置でJeff Mills氏がプレイをするのか、楽器の演奏者はどの位置に来るのかを慎重に吟味しながら、吊り込みを行っていました。

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吊り込み後はジュート棒と呼ばれる、照明を調整するための棒で位置を微調整。このジュート棒、重さはだいたい4kg程度ですが、両手で垂直に持ち上げて、繊細に照明を動かさなければいけません。腕やお腹の筋肉を使うなかなかの肉体労働です。今回の照明スタッフは女子学生がひとりだけ参加しており、身長や体格の違いにも負けず、ジュート棒を操作していました。

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照明設営後も、各スピーカーの音響調整やJeff Mills氏を交えてのリハーサルを見学しました。実際に機材を触るだけではなく、現場の空気感を間近に感じながらの舞台設営は大きな刺激になったことと思います。長時間の作業の疲れを感じさせない学生の笑顔が印象的でした。

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会場1階ギャラリーで展示されていたインスタレーション作品、「DAYDREAM v2」の音響設営にも神戸電子の学生が参加。写真ではなかなか本来の姿が伝わりませんが、作品は、音響とシンクロさせて動きの変わる光のボックスが空間に照射されるというもの。暗闇のなかで、ゲートが開くように光がゆれ、近未来的な作品でした。

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また、地下のシアタールームでは「Plane Scape」というインスタレーション作品も展示されていました。こちらは音響に合わせて動きの変わる光が、張り巡らされた弦に照射されるというもの。暗闇のなかで、光が雨や霧のように姿を変えるのですが、鑑賞者は弦の間、作品のスペースに入り込むことができます。作品と自分自身とが一体になるような心地よさでした。

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音響はライブやコンサートだけでなく芸術に関する分野でも大きな役割を果たします。今回の芸術作品の音響設営によって、音を扱う仕事に関する新しい可能性を学生たちは得たのではないでしょうか。

大盛況のうちに幕を閉じた「TodaysArt.JP 2015」in神戸。華やかな催しの裏にあった学生たちの地道な活動が、成功のひとつの要素であったと確信しています。今後もさまざまな会場の場づくりに携わる学生諸君の姿を見ていきたいと思います。

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「神戸市公安9課」前半 市とアニメの公民連携PRプロジェクト

2015.6.26

CATEGORIES:国内 ,神戸

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©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会

「神戸市公安9課」が始動しました。

「公安9課」とは、世界的な人気アニメ「攻殻機動隊」の主人公たちが所属する架空の情報機関のことです。その「攻殻機動隊」シリーズと神戸市が、公民連携による面白い広報プロジェクトをはじめました。

「攻殻機動隊」の原作者である士郎正宗氏は兵庫県出身で、作品自体も近未来の神戸を想起させた架空都市「ニューポートシティ」が舞台となっています。本ページのトップ画像は、このプロジェクトを象徴するものとして描き下ろされたもので、神戸のランドマークであるポートタワーと作品の主人公が描かれています。

プロジェクトの目的は、「聖地巡礼」による観光振興もありますが、「IT産業の振興」や「オープンデータ・ビッグデータの利活用」を推進するIT先進都市神戸のプロモーションにも力点が置かれています。この点、理事を務める「地域ICT推進協議会」を通じ関わっています。20日には「攻殻機動隊 新劇場版」も公開されましたので、注目度さらに高まると思われます。詳しくは専用サイトで。

神戸市公安9課

さて今回、「神戸市公安9課」プロジェクトメンバーの方々(市職員)にお話をうかがう機会がありました。公民連携を担当されている河端室長と、政策調査を担当されている瀬合課長、そして市のIT推進を担当されている松崎課長、多名部課長です。

神戸市と攻殻機動隊の広報連携、今後の展望、加えて、攻殻機動隊のなかに予見されている、IT技術が市民にもたらす新しい生活環境、今後神戸が推進していくIT関連施策にも話が及びました。前後編にわけてその模様をお伝えします。

――:「神戸市公安9課」の広報について、本プロジェクトは公民連携形式ということですが、具体的にはどのような団体がどのように関わっているのか教えてください。

河端室長(以下、河端):今回の計画は、「公民連携PRプロジェクト」として、アニメ製作委員会と行政の関係者が一緒になって進めています。市役所のメンバーは、企画調整局情報化推進部やデザイン都市推進部、市長室広報課、産業振興局経済企画課や観光コンベンション課などです。民間の事業者のメンバーは、「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会の方々、それから、福岡校長も在籍されている「地域 ICT推進協議会」、それから「神戸フィルムオフィス」、「神戸国際観光コンベンション協会」のみなさまになります。

――:多方面の方々が関わったプロジェクト体制ですね。

河端:そうですね。民間では、IT事業者以外に、製作委員会の内部メンバーとして、映画の「東宝」、アニメプロダクションの「プロダクションIG」、大手広告代理店の「電通」、アニメ・特撮の「バンダイビジュアル」といった企業の方々もおられます。ありがたいことに、いろいろな方が関わって盛り上げていただいているところです。

――:市と企業群を合わせると、かなりの人数ですね。まさに一大プロジェクト。観光施策としては、攻殻機動隊とのコラボで現在どんな計画が動いていますか?

河端:攻殻機動隊は、作品中に神戸を想起させるようなシーンが多々登場することもあり、「このシーンは神戸のここなんじゃないか」と、実際の場所と比較できるような形で、サイトのなかで紹介していこうと思っています。実際の神戸の街で、色々な登場場面となっている場所を訪れていただけるよう、聖地巡礼効果を狙っていきたいと思っています。是非特設サイトにご注目いただければと思います。

――:今回の連携企画にあたり、神戸市民をはじめとする受け手の反応はいかがでしょう。

瀬合課長(以下、瀬合):Twitterを分析しますと「神戸市がようやく本気を出しはじめた」「これを待っていた!」など、関心の高さがうかがえる反応をいただいています。サイトに関しても、攻殻機動隊の世界観と合っていて、今後の展開に期待するという声が95%以上。批判的な声はほぼ見当たらないですね。

――:素晴らしいです!攻殻機動隊以外にも神戸の街はアニメやマンガの舞台として描かれることが多いように思います。観光施策として、今後もアニメやマンガに対しどのような期待をされておられるかお教えください。

河端:神戸には「神戸フィルムオフィス」という、映画のロケ支援を行っている組織があります。映画の撮影にも市内のいろんな場所が多く使われますが、アニメとの本格的なコラボレーションは今回がはじめてではないかと思います。今回はチャレンジの意味合いが強かったですね。

瀬合:このプロジェクトは、神戸市役所にとっては大きな挑戦なんですね。これまで、神戸市はサブカルチャーに対しては硬いところがあり、アニメやマンガを必ずしも大きくクローズアップしてきませんでした。ただ、久元市長が就任され、結構、組織全体としてチャレンジングな動きが出始めているなと思います。攻殻機動隊以外にも、色々な作品が神戸を舞台にしていますし、これからもしていくと思いますが、まず神戸市公安9課をしっかりとカタチにして行き、アニメやマンガカルチャーが街にもたらす効果をじっくりと見定めていくことが重要なんじゃないかなと思います。

――:なるほど。マンガやアニメそして、実写映画の舞台としても結構なシェアが有りますし、今後聖地巡礼としても多面的に盛り上がっていくと嬉しいですね。話は戻り、攻殻機動隊との連携で、今後の発展があれば教えていただけますか?

河端: 20日から新劇場版公開になりますので、まずはそこに合わせてPRを強化していきます。同作品に注目されている方に、神戸市やその施策にも注目していただけるよう持っていきたいと思います。製作委員会とのコラボは秋ぐらいまで続く予定です。11月には、世界最大級のデジタルコンテンツのカンファレンス「SIGGRAPH ASIA 2015」がここ神戸で開催されます。そこでも「攻殻機動隊 新劇場版」と連携し神戸の施策をPRしていきたいと考えています。それと、これはちょっとしたことですが、神戸新聞にも書き下ろしイラストを折り込み広告として載せていただきましたし、前作となる「攻殻機動隊ARISE」では、首都の設定が福岡市だったということもあり、「神戸と福岡の未来」と題し、双方の市長のメッセージを載せた企画記事も展開しました。

――:「都市の未来」、多分にIT領域との関係性を想起させるタイトルが出ましたので、次はそちらの方に話題を振りたく思います。神戸市公安9課は、アニメと街の観光連携にとどまらず、街のIT振興にも大きく関わっていますよね。

松崎課長(以下、松崎):そうですね。神戸市公安9課関連の話であれば、去年の冬から「オープンデータの利活用」に関するプロジェクトが動きはじめました。市が持つ膨大な情報を活用し、市民生活のクオリティを上げることができないか? という想いをカタチにするべきだと考えています。世界の先進的な都市で取り組みが始まっているオープンデータについて、神戸市も取り組み始めました。今までは情報というものを物理的な形で繋いでいくのみでしたが、もっとネットワークを通じて人々の知恵や知識、こちらが知り得ない情報を繋ぎながら、いかに新たなものを生み出していくか。こういったことに取り組むのが、私の担当しているICT施策です。

――:攻殻機動隊が仮想世界として世界に先駆けて提示したネット上「神戸市公安9課」人気もさることながら、そこに掛け合わせた現実世界でのICT活用にも注目すべきですね。攻殻ファンならば常識ですが、作中には「電脳」と呼ばれるネットワーク世界が物語の中心に有ります。現在のインターネットでは、PCやスマートフォンなど、なにかしらの電子デバイスが必要になりますが、「電脳」は脳自体にマイクロチップを挿入することで、特別な装置がなくとも直接脳からネットワークに接続することができるというもの。現時点では、さすがにこの電脳世界とまではいきませんが、スマートフォンやウェアラブルデバイスが普及し、私たちの生活は、現実世界と仮想世界(ネット)を、いつでも、どこでも、行き来できるようになってきました。かつてはインターネットを利用するのにも、甲高いダイヤルアップ接続音を聞きながら、ポータルサイトにアクセスしなければなりませんでしたよね。ポータルとは、港(port)から派生した言葉。つまり、文字通り門や入口を“通過”しなければ、ネットの「向こう側」にはいけなかった。今では高速化したネットワークと多様化したデバイスを使いこなし、人は幅広い情報を瞬時に得ることができる。ゆえに情報は秘匿するのではなく、公表して活用することでその価値が上がってくると。

松崎:オープンデータの利活用は神戸市として重要な取り組みであることには間違いないのですが、それだけではなく、リアルの世界との繋がりをつくっていかなければバーチャルな世界は成り立ちません。バーチャルな世界を利用してリアルな世界の質を上げていく。そのコネクションはなにかというと、ビジュアル展開を通じて理解していただくアプローチをとることです。

――:行政のICT活用として、パッシブ型だったのが、未来予測も含めてアクティブのほうに歩を進めるということですよね。市民から見てわかりやすい具体事例或いはプランは有りますか?

松崎:はい。たとえば被災地の写真や映像をオープンにして、防災・共済に使ってもらうとか、映画のロケ地をマップにして、アプリとして落とせるようなアイデアをいただいています。私たちがまもなくリリースしようとしているのは、地図情報をベースにした、市民公開型のオープンデータサイト。それでなにができるかというと、公共施設の場所がどこにあるかがマッピングでわかる。それを利用して、避難所がどこにあって、地域での避難経路を考えるといった活用ができます。防災だけではなく、その地図情報を使って観光にも展開できる。それらが官だけではなく、市民レベルでプロットすることができ、行政のデータを使って個人のルートマップを地図上でつくることも可能です。

――:行政しか持ち得なかった情報を公開する。市民が自分ごととして情報を活用できるようになりそうですね。市役所の推進体制はどのようになっていますか?

多名部課長: 3つ部局が横断的に関わっていると思っていただいていいと思います。ひとつは市や市役所のIT化を推進する部署です。次に市域の観光を活性化する部署。それから、これからの神戸の街をつくってくれる若手の起業家、スタートアップの人々を育てることを目的とした経済企画部門。これら3つの部署が主に関わっています。それらを統合する公民大学連携推進室。そして広報課がPRという観点で全体を俯瞰しながら見ています。そういう形を理解していただければ結構です。

――:実によい体制ですね。ビジュアル面でのプロモーションから、広義の意味での街づくりに至るまで、攻殻機動隊を題材として、幅広い取り組みがなされている。画期的な体制で推進される本プロジェクトですが、最終的なゴールはなんでしょう?

河端:目的はふたつあります。ひとつは観光振興。もうひとつはIT関連産業の振興や、オープンデータの利活用によって、 街のITを推進させること。この2軸を神戸市公安9課として推進し、PRしていきたいと思っています。

松崎:神戸市は観光にとても力を入れていますが、近未来の神戸を描いている作品を通じ、神戸を訪れた人に、そのイメージを合わせもって体感できるような仕掛けをつくっていきたいですね。あと、神戸市はこれから特にITに力を入れていくぞ! という強いメッセージを打ち出したい。将来、ITはものづくりとしっかり繋がっていくと思っていまして。「IOT」(Internet of Things)と呼ばれる広義な意味でのものづくりが、デザイン、クリエイティブな思考そのものと深く繋がっていけばいいなと。神戸市はもともと、「デザイン都市」を掲げていますから、今まで神戸市が進めてきた政策の延長にITの要素が加わっていくと、とても魅力的なクリエイティブシティが生まれゆくのではないかと思っています。

――:ITを活用した、クリエイティブな街のデザイン、そして実現。かなり期待できるのではないでしょうか。一市民としても、微力ながらデザイン都市に関わらせていただいている身としても、楽しみです。

次回は、神戸市のIT施策について、より掘り下げた対談の様子を紹介します。
 
 

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神戸の未来を担う場所と文化 「未来都市創造に関する特別委員会」

2015.4.20

CATEGORIES:国内 ,神戸

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昨年、神戸市役所で行われた、神戸市議会「未来都市創造に関する特別委員会」に参考人として呼ばれました。質疑応答含め、3時間にも渡り「若者の集う街」テーマでプレゼンと討論をしたのですが、若い人たちはいつの時代も活気の象徴であり、彼らが集う場こそ「これからを生きていく街」なのだという考えを共有した、とても心地の良い会でした。このテーマ、全国的に若者が急激減少する今、市町村問わず優先して向き合うべきものではないでしょうか。次回5月11日の「未来都市創造に関する特別委員会」市民報告会に先立ち、前回の様子をお伝えしたいと思います。

若者が集うためのアイデアとして、2つのことを話しました。豊かな市民活動を享受する「場」の必要性と、上質な音環境を尊ぶ「文化」についてです。
 
国土交通省が発表した「国土の長期展望」はご存じでしょうか。直後に東日本大震災が起こったため、一般紙では大きな扱いとなりましんでしたが、多方面で議論が百出しました。国は2050年には全国6割もの市町村の人口が半減すると予測。半減….. 教育や医療といった重要な生活インフラが維持できなくなると言っているわけです。そんななか、東京、名古屋、大阪、沖縄のみは、今よりも人口が増えるとも予測。今以上にある種極端な都市化が進むとしています。この予測を好む人は少ないが、まぁそうなるのだろうねと受け入れている人が多いように思います。
「街づくり」は人口問題と切り離せませんが、とくに若い人は、次の時代を担い、地域再生のカンフル剤のような役割も担う存在です。では、どうやって若い人を集めるのか?

若いエンジニアやクリエイターを集めることからはじめてはどうでしょうか。あらゆるビジネスがソフトウェア化していく今、企業誘致と同じかそれ以上の熱量でもって推し進めるべきは、高い技術力を持つエンジニアと、とてつもなく面白いクリエイター達の誘致だと考えます。クラウドをとことん活用し、オフィス不要。ビジネスや生活向上に向けた面白いアイディアを、自分たちの手でどんどん’カタチ’にしていくことができる人たち。社内ではなく、アウトソース先のパートナーとして、各地に雇用も産み出せるような人たち。ネットやITがどんどん世を変えていく世紀(真のIT革命はまだまだこれからです)の成功の鍵を握る存在といえるでしょう。彼らは全国どこでも好きなところに住む場所を選ぶことができる。寛容性が有り、とにもかくにも心地よい場所を求めるはずです。
彼らが惚れ込み、住みたくなるような環境をつくり、インフルエンサーとして神戸の魅力を若い世代に発信してもらう。企業のマーケティングも最初の一歩はターゲットを定めることからはじめますが、神戸が今、注力すべき’顧客’(ニーズをウォッチすべき対象)はエンジニアリングやクリエイティブな力をもった若者たちではないでしょうか。
この視点は、これまで別個であった産業振興(産業誘致)施策と住民生活環境整備施策が同じになるという大きなメリットを産み出します。

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重要なのは「場」の魅力です。具体的な施策として「デザイン都市・神戸」創造会議でもお話した「東遊園地公園の芝生化」などは小さなものですが、神戸の心地よさを格上げし、対外的な発信に一役かうものだと思います。市民が良い意味で、まちを所有する感覚を持てるよう、日常的なイベントが多発するアウトドアリビング的な公園として再生したいものです。このコンセプトは、神戸モトマチ大学の村上さんや、神戸R不動産の小泉さん達と議論する中で生まれました。

ニューヨークの「ブライアント・パーク」のように、Wi-Fi環境を整備できれば素晴らしいです。海外によく出向く方はご存知だと思いますが、日本は無料のWi-Fi環境の整備が遅れています。都心の公園に、誰でもWi-Fiを使うことができる公園があれば、平日にクリエイターたちがノマドワークをしたり、休日には家族を連れて余暇を過ごしたり、市民団体がワークショップを行うこともできるでしょう。市民で「シェアする公園」が、新しいアイデアやビジネスを生むプラットフォームになるという発想です。「東遊園地公園に行けば、何かおもしろいものや人に出会える」。これが神戸の常識となれば、世代を超えて、都心から同心円上に活気が広がっていくのではないでしょうか。

産業資源の集積に加え、こういった生活の心地よさが高まっていくことの重要性を強く感じます。実際、アメリカの若いクリエイターたちは、ナイトライフに乏しいシリコンバレーから、コワーキングスペースが豊富で、ファッションをはじめ文化の成熟したサンフランシスコに続々と移住しています。

今の日本では、それぞれの市民が公共の場所を「保有」するという感覚は薄いように思いますが、これからの若い人たちは、こうした「場所」を求めているのだと思います。

もう一つのお話。音楽や音を尊ぶという「文化」についてです。
(以後、追記します)

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