ポートランドにみる“これからの都市”のあり方(後編)

2014.10.6

CATEGORIES:海外 ,神戸

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さて前回に続き、米国のクリエイティブな都市、ポートランドを訪れた経験から“これからの都市”のあり方についての所感をお届けします。

前編で書いた通り、ポートランドは“身の丈主義”を通じて、日常の暮らしに豊かさが溢れていました。生産者から食卓までミニマムな流通経路を用いた地産地消が確立され、職人から一般家庭まで自分たちでつくれるものは何でもつくるDIY精神が根付いています。大量生産・大量消費が主だった暮らしは、過去のものになり、いま、新しい時代の暮らし方のモデルケースとして、ポートランドが世界中から注目を集めています。

でも、僕が強く思ったのは、ポートランドの暮らしって、ひと昔前の日本には、当たり前にあった、ということ。地元の食材を近所の商店街で買い、日用品は個人経営の荒物屋で手に入れる。着られなくなった服は雑巾にして再利用し、ちょっとした家具なんかも釘とトンカチでつくっていた。経済の発展とともに、必要でないものまで買うようになり、古くなったらすぐ捨てる。そんなサイクルが主流になりましたが、人の暮らしというのは元来、自分の手の届く範囲で完結させるのがもっとも心地よく、無駄のない生活なんじゃないでしょうか。

今、そんな暮らしを人々は求めているんだと思います。大量生産・大量消費の渦に飲み込まれ、お金や価値観をすり減らし続けることに疲れてしまったのでしょう。もっと物事の本質的な価値を重視し、均質に与えられるものではなく、“自分にとっていいもの”を求めることが理想になりつつある。だからこそ、ポートランドの身の丈主義な街のスタイルが、今もっともカッコよく映るんだと思います。余談ですが、テレビ番組の「ザ!鉄腕!DASH!」(日本テレビ)が人気なのも、身の丈主義の豊かな暮らしを手づくりしているからではないでしょうか。こんな生活うらやましいなぁ……と思いながら観ている人も多いと思います。

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今回の出張のなかで考えていたのは、ポートランドのスタイルを神戸の街にいかに取り入れるか、ということでした。神戸には魅力的なモノやカルチャーがたくさんありますが、まだまだそれを活かしきれていない。それは均質化されてしまった都市に、神戸の街がもつ「らしさ」が埋もれてしまっているからでしょう。これは文化的な話ですが、東京一極集中の波が衰え、各地方都市のアイデンティティー、特色化が強く求められる昨今ですが、神戸の街がより豊かになるためには、今後、身の丈で考える街づくりが必要になると感じています。

幸い神戸には、神戸ビーフを代表とする畜産部やや新鮮な海産物に農作物など、上質な食材が抱負に有ります。また、居留地に見られる西洋文化や、南京町のチャイナタウン、在日インド人のコミュニティと、多様なカルチャーが混在し、ジャズやコーヒー、スイーツ、それにファッションなど、海外の文化をいち早く取り入れ国内に発信してきました。これらの強みを活かしながら、神戸の街が成長していけるとベストだと思います。神戸でしか味わえない料理、神戸でしか買えないもの、神戸でしか体験できない暮らしが、街の隅々まで浸透していったなら、素晴らしいことだとは思いませんか。

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そんな街づくりのなかで、神戸電子は一体何ができるのか、というのも重要なことです。ポートランドには「Pacific Northwest College of Art(PNCA)」というアートカレッジがあります。PNCAで生み出されるアートやデザインが街の暮らしへと浸透し、人々を豊かにしている。いわばポートランドのクリエイティブを担う拠点です。これを神戸電子で実現するのが僕の野望のひとつ。神戸電子から生まれる新しい発想や技術が、神戸の街と結びつきながら、近隣の人々の暮らしに役立つ。ポートランドの出張を通じて、あらためて神戸電子の掲げる“地域密着”が鮮明になったように思います。

最後に、ポートランドで感じたのは、ひとつの家族のような小さな共同体の強さです。神戸の街も、そんなコミュニティを築ければいいなと。いや、この記事を読まれた皆さん、ぜひ一緒に神戸をそんな街にしていきましょう。

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