「現在地展」から踏み出す、グラフィックデザイン学科の未来

2015.4.2

CATEGORIES:国内 ,学校・教育

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先月末、グラフィックデザイン学科の進級制作・卒業制作展がデザイン・クリエイティブセンター神戸「KIITO」で開催されました。展示会の名称は「現在地展」。取り組んできた1年の成果を公に表す場であり、学生一人一人がいま立っている地点を見直す機会でもあります。
 
グラフィックデザインは、ポスターやロゴ、雑誌やWebなど、幅広い領域の「見た目」をつくる仕事ですが、デザイナーの役割はそれだけにとどまりません。視覚に訴えかける表現を通して、いかに人や社会が抱える課題を解決するかが問われます。
 
そのため、この「現在地展」では、成果物を並べることに留まらず、学生たちが自らの制作物についてそれぞれプレゼンテーションしていきます。各自のデザインがどのような問題の解決を狙っているのか、その思考や制作過程について発表し、言葉にする。デザインは、たとえ文字の配置ひとつとっても、その書体や大きさ、配置に「意味づけ」をしていくことで成立します。言葉として自分のデザインを語れるか否かは、いいデザイナーの条件の一つといっても過言ではないでしょう。
 
まず、1年生の進級制作。グラフィックデザイン学科の進級制作は、入学からわずか半年で制作がはじまり、6ヶ月もの時間をかけてじっくりと取り組みます。課題内容は、関西圏に所在する実際の企業からいただきます。今年は14社もの企業に、クライアントやコーディネーターとしてご協力いただきました。
 
この試みは一昨年からはじめたもので、学生たちが実際の企業やお店を訪ね、課題のヒアリングから、ミーティングを重ね、最後は制作物に対するチェックまでしていただきます。プロの実務作業とほぼ同じ流れで進行します。なかには、緊張して目上の方とうまく話すことがないという学生や、人前で話すこと自体が苦手な学生もいたりします。しかし、クライアントとの対話を重ねていくなかでそれを克服し、進級制作の前後で印象が大きく変わる学生も少なくありません。クライアントの悩みや課題を吸い上げるコミュニケーション能力は、デザインをするための基礎能力。学生のためにと、協力してくださった企業の皆様には、深く感謝申し上げます。
 
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進級制作は、発表だけの場ではありません。展示には、WebやDTP系企業の採用担当の方々がお見えになります。気になった作品の制作者には、自由にお声かけいただけるようになっています。今年も、東京、大阪を始め、県外からも多数お越し頂きました。学生は採用担当の方々へのプレゼンテーションを通じ、1年生の段階から、採用へと繋がる関係値を築くことができるのです。今年も、熱心にプレゼンを行う様子が随所に見られました。
 
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次は、2年生の卒業制作。彼らにとっては最後の成果物です。架空の女性アパレルブランドを立ち上げ、ブランドイメージに沿った平面デザインから抜け出し、プロダクトデザイン的な発想で、人とモノの関係を問い直すといったような作品が多く展示されました。
 
手前味噌な話ですが、今回、1つの学科とは思えないほど多様性にあふれた展示に驚きました。神戸電子のグラフィックデザイン学科は、ポスターや雑誌などのアナログなアウトプットと、Webやアプリケーションなどのデジタルなデザインを学科として分けていないのが特徴です。情報の受け手との接点を問い、発想力、色彩感覚や構成力を駆使してデザインに落とし込む基礎能力は、領域をまたいでも活きる力になると信じます。

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いま世界で最も価値ある企業となったApple。その徹底的なデザイン主導に追従するように、昨今「デザイン」に対する考え方が大きく変わってきているように思います。かつては、商品のパッケージや自動車や服などのフォルムなど、デザインの力が影響する業界は限定されていました。しかし昨今、単なる「見た目」を美しくする装飾や、より理解を促すという役割以上に、デザイン的な思考があらゆる業界にとって重要視されています。ユーザーが受けるサービスや、商品を使用した際の体験をつくることは、いまやビジネスを成功させるための大きな鍵。すぐれたデザインは、人々にこれまでになかった新しい価値をもたらし、生活のあり方さえ一変させてしまう力があるのだと思います。

今後、社会で活躍していくグラフィックデザイン学科の学生たちには、デザインの力で未来社会を築いていって欲しいものです。

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