「AIがコードを書く時代に、わざわざ学校でITを学ぶ意味があるのか?」高校生や保護者の方から、こうした問いを投げかけられることが増えました。
生成AIの普及により、ITへの「ロマン」や「憧れ」が少なくなったと感じる場面もあり、少し寂しく思うこともあります。
しかし、教育の現場に立つ私の答えは明確です。AIが進化すればするほど、人間がITを基礎から学ぶ価値はむしろ高まっているのです。
AIの「高度な嘘」を見抜き、使いこなす側に立つ
教員紹介 岡田 直己先生
AIシステム開発学科教員/専門: IT・AI・IoT
関西大学社会学部卒業後、教育関連企業でeラーニング事業やWEBアプリ開発に従事。現在は神戸電子で、WEBシステム開発からAI・IoT分野まで、実践的な授業を通して指導を行っている。
今のAIは、指示を出せば即座にプログラムを生成してくれます。
しかし、AIはまだ完璧ではなく、時に「高度な嘘」をつきます。知識がないままAIの回答を鵜呑みにして動かそうとしても、エラーに直面するのが関の山です。
そこで重要になるのが、AIの嘘を見抜き、正しく修正できる技術素養です。私の授業ではAIを禁止せず、むしろ積極的に活用させています。
しかし、最終的な実行結果を吟味し、責任を持つのはあくまで人間です。基礎を固めて初めて、AIは「魔法の杖」ではなく、自分の手足として使いこなせる道具になります。
一人では絶対に磨けない「共創の人間力」
独学やオンライン学習でも知識は得られますが、決定的に足りないものがあります。それは、他者とぶつかり合い、一つのものを作り上げる経験です。
エンジニアの本質は「技術を使って課題を解決する人」です。
現場で最も求められるのは、おしゃべりではない「真のコミュニケーション力」。つまり、異なる価値観を持つ仲間と論理的に議論し、物事を整理して説明する力です。
神戸電子では、1年生からチーム開発を徹底しています。意見が食い違い、プロジェクトが停滞することもありますが、私は学生に「どんどん失敗してください」と伝えています。失敗が許される環境で自分の立ち位置を見つけ、他者と成果を出す。この経験は、一人での学習では絶対に得られません。
0から1を生み出す「アイデア」を社会へ
AIが得意なのは情報の整理や繰り返し作業です。一方で、社会の課題を見つけ、0から1の価値を生み出すことは人間にしかできません。
例えば、本校の学生チームが制作した路上ミュージシャン向けのSNSが、神戸市の支援事業に採用された事例があります。彼らはAIを駆使して開発を効率化しましたが、その原動力は「社会を良くしたい」という彼ら自身のアイデアでした。
このように、「勉強」ではなく「仕事のシミュレーション」として技術を捉え、社会実装に挑む機会がここにはあります。最初はキーボード入力もままならなかった学生が、卒業時にはプロと遜色ない考え方や行動ができるようになる姿を、私は毎年目の当たりにしています。
仲間と高め合う「切磋琢磨」という最高の環境
ITは独学でも学べますが、学校という場所には、自分一人では絶対に作れない「熱量」があります。
本校には、同じ目標を持つ仲間が全国から集まります。周りの仲間の成長を目の当たりにすることで、「負けていられない」という心地よい刺激が生まれるのです。
授業の合間にも「この開発手法の方が効率がいい」「データベースは何を使っている?」といった、プロ顔負けの会話が自然と交わされるようになります。
教員が教える以上に、学生同士が成果を見せ合い、称賛し、時に競い合う。この「切磋琢磨」できる環境こそが、学生を短期間でプロのエンジニアへと引き上げる最大の原動力だと私は確信しています。
ITは「楽しむ力」を育てる最高の選択
「未経験からでも大丈夫か」という不安もあるでしょう。
神戸電子には70年近い実績があり、本分野の入学者はほとんどが未経験からスタートして90%以上が専門就職を実現しています。私が大切にしているのは、学生がITを「好き」になり、変化の激しいこの分野を「楽しんで」学び続けられるようになることです。
人口減少社会において、IT技術は自分を助ける強力な武器になります。このダイナミックな時代にITの世界へ踏み出すことは、最高の選択です。好奇心を胸に、私たちと一緒に未来の社会システムを支える人材を目指しましょう。
学びの集大成 デジタルワークス優秀作品紹介
デジタルワークスとは
学生たちが在学中に磨いてきた技術や表現力を発表する成果発表会です。今回は、各分野から注目作品をピックアップ。アイデアや技術、個性が光る力作がそろいました。
AIシステム開発学科、ITエキスパート学科、ITスペシャリスト学科、情報処理学科のデジタルワークスでは、学年予選を勝ち抜いたメンバーたちの熱いプレゼンテーションが繰り広げられました。
大賞作品:音楽制作アプリ「Micrie」
「Micrie」作品概要
「いつでも、だれでも、つくれる音楽」をテーマに、鼻歌から手軽に音楽制作ができるWebアプリです。最大の特長は、楽器演奏や音楽理論の知識がなくても、直感的な鼻歌からメロディーを生成し、伴奏やリズムを自動補完して一曲を形にできる点にあります。専門ソフトの導入といった高い障壁を取り払い、音楽を「聴く側」から「作る側」へと繋げることで、創作の最初の一歩を後押しすることを目指しています。
「Micrie」作品発表の動画はYouTubeでご覧いただけます
開発者 AIシステム開発学科 1年 Nさん(兵庫県出身)
開発者コメント
既存APIでは対応できない鼻歌特有の揺らぎを捉えるため、独自の音声解析APIをPythonで構築しました。開発では、人間の曖昧な入力をどこまで「表現」として残し、どこからを「ノイズ」として補正するかという、音楽的自然さの追求に最も苦労しました。AIを「作る主体」ではなく、ユーザーの発想を補完する存在と位置づけ、専門用語に頼らず直感的に創作を楽しめるUI/UX設計にも注力しています。
アニメの聖地巡礼アプリ「あにすぽ」
「あにすぽ」作品概要
アニメの「聖地」を地図上に可視化し、ナビゲートや写真投稿ができる聖地巡礼支援アプリ。日常の風景を物語の力で特別な観光資源に変え、地域活性化やインバウンド需要への貢献を目指しています。
「あにすぽ」作品発表の動画はYouTubeでご覧いただけます
開発者 ITエキスパート学科 4年 チーム「かしこそゆ」
開発者コメント
著作権に配慮し、楽天アフィリエイト画像を活用したクリーンな仕組みを構築しました。4カ国語対応や収益モデルの実装、iOS/Androidでのリリース作業など、持続可能な運営体制の整備に注力しました。
学びを、誰かに届く成果物へ
AIを使いこなすには、その仕組みや出力を確かめる基礎知識が欠かせません。そして、技術を社会の課題解決につなげるには、アイデアを形にし、仲間と議論しながら完成を目指す経験も必要です。
岡田先生が語るIT教育の価値は、技術を身につけることにとどまりません。学生同士で学び合い、試行錯誤を重ねた経験が、「Micrie」や「あにすぽ」のような成果物へと結びついています。
神戸電子専門学校 オウンドメディア編集担当 +プラスラボ編集部
IT・ゲーム・ロボット工学・デザイン・動画・アニメ・声優・音楽・建築まで、幅広いクリエイティブ分野を扱う神戸電子専門学校の公式メディア「+プラスラボ」編集部です。
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